What is "Projection Science"?
プロジェクション・サイエンスとは?
研究の概要
このページでは,現在,我々が精力的に研究を行っている「プロジェクション・サイエンス」について紹介します.
人間の認知的なメカニズムの解明とそのモデル化は,人工知能研究の理論的な基盤をなすものである.しかし近年,従来の理論的な認知モデルの限界も明らかとなってきた.そこで我々は,認知科学的視点から「投射」(projection)を中心概念とした新たなモデルを提案し,将来的には現在の人工知能研究と融合させ,知的なシステムの構築に貢献することを目指す.
ここで述べた「投射」の概念について簡潔に説明する.人は外界から情報を受け取り,それについての「表象」を作り上げていると考えられる.人の感覚や知覚はこの表象に基づいている.この感覚や知覚は脳という情報処理システム内に生じるのだが,人はこれを情報の提供元の性質と見なす.つまり,ここでは内部表象の世界への投射が起きている.通常はうまく働く投射であるが,様々な歪みも生じる.たとえば,ラバーハンド錯覚,フルボディ錯覚,腹話術効果などの実験室内の様々な現象,統合失調症における幻聴,幻視,失行症に見られる対象定位の不全などに見られる実在しない対象への投射,VR/ARによる臨場感,没入感などは人間の「投射」の豊かな広がりを示している.
これまでの認知科学や人工知能研究では,この「投射」について研究されることはほとんどなかった.この理由としては投射があまりに当たり前のことであり,その重要性が認識されてこなかったためである.一方,人工知能を含めた情報科学,特にエージェント研究,VR,ARを用いたインタフェース研究では,様々なイノベーティブな装置の開発により,「投射」を自在にコントロールする試みを行ってきた.こうした先端技術を用いて,「投射」という,認識論の根源的な問題に切り込むこと,そしてエージェント,VR,AR研究を飛躍的に発展させ,研究成果を人工知能研究と融合させていくことが可能となるであろう.
書籍の出版
プロジェクション・サイエンスに関する以下の書籍が出版されました.私は5章を分担執筆させていただきました.
ご興味をお持ちの方は是非,ご覧ください.
- 『プロジェクション・サイエンス:心と身体をつなぐ第三世代の認知科学』 (鈴木宏昭編著,近代科学社,2020年9月30日発行)
- 小野哲雄.5章「プロジェクション・サイエンスがHAI研究に理論的基盤を与える可能性」,pp. 114-138.
オーガナイズドセッション
これまで開催したオーガナイズドセッションの論文をご参照ください.今後,このページの情報を充実させていきます.
- 2016年9月16日(金)
日本認知科学会第33回大会 [OS03]
- プロジェクション科学の創出を目指して
- 2017年5月23日(火)
人工知能学会全国大会(第31回)[OS-21]
- 「プロジェクション科学」の創出と展開 (1)
「プロジェクション科学」の創出と展開 (2)
- 2017年9月14日(木)
日本認知科学第34回大会 [OS03]
- プロジェクション・サイエンスの基盤と展開
- 2018年8月31日(金)
日本認知科学第35回大会 [OS11]
- プロジェクション・サイエンスの深化と融合
- 2019年9月7日(土)
日本認知科学第36回大会 [OS08]
- プロジェクションの理論とモデルへ向けて
- 2020年9月19日(土)
日本認知科学第37回大会 [OS09]
- プロジェクション科学の基盤拡充を目指して:関連諸科学との対話
- 2021年9月5日(日)
日本認知科学第38回大会 [OS13]
- プロジェクションのモデル化と応用へ向けて
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